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(公社)砂防学会信越支部では,令和6年(2024年)10月4日(金),長野県の飯山市・栄村において現地見学会・検討会を開催しました。

飯山市から栄村にかけての千曲川左岸山地では本年,令和6年4月に発生した飯山市野々海川上流の崩壊,平成29年5月の無降雨時に飯山市井出川で発生した大規模崩壊と土石流災害,平成23年3月12日の長野・新潟県境地震に起因した栄村中条川での大規模崩壊等,数年に一度大規模な崩壊や土石流が発生しています。

本年1月に発生した地震及び9月20日からの大雨により能登半島では大規模な土砂災害が多数発生し,地震と土砂災害の関連が課題となっている状況も踏まえ,砂防学会信越支部では本地域での土砂災害現場を視察すると共に意見交換を行ったものです。

  1. 開催日程
    開催日 令和6年10月4日(金)
    日程 8時 長野駅出発 → 9時 飯山駅で参加者合流 → 現地へ
    移動車中にて見学地一帯の地形地質,一連の土砂災害の概要について学ぶ。
    午前 飯山市 野々海川崩壊地見学・検討会
    午後 栄 村 中条川土砂災害発生現場見学・検討会(途中雨のため会議室へ移動)
  2. 参加者
    堤支部長はじめ22名参加。うち学生会員3名
    講師として長野県北信地域振興局林務課 神原博明課長補佐様にご参加いただいた。
  3. 見学会・検討会概要
    1. 野々海川崩壊地
      現地で神原課長補佐様から崩壊発生状況,調査,対策の概要についてご説明いただきました。崩壊地は面積1.9 ha,崩壊土砂量57,490 m3と推定,下流の住民に対しては土砂流出シミュレーション結果をもって,既往最大1時間降雨量の場合でも氾濫の危険が低いことをお知らせしたとの説明でした。流で用水を使用している住民からは降雨のたびに濁水が流れることに対して抑制の要望があり,今後対策を検討していくとのことでありました。

      崩壊は野々海川右岸側の崖地形の頭部で発生しました。参加者は下部の土砂流出地点までご案内いただき,現地の状況を確認して,発生原因や今後の対策等について意見を交わしました。

      崩壊の頭部を見通せる所まで入ることができました。頭部の規模に対して流出土砂量が多いとの印象を受けました。

      流出した土砂は野々海川本川に流入しましたが,その後の出水で多くが流出したとのことでした。崩壊発生時は融雪期直前で積雪があったため,土砂と雪が混じって崩落し,その後の融雪と共に土砂流出が促進されたと見受けられました。

    2. 中条川土砂災害発生現場
      平成23年(2011年)3月12日3時59分,東日本大震災の翌日,長野県と新潟県境を震源とする震度6強の地震が発生しました。地震の直撃を受けた栄村では家屋やライフラインに大きな被害を受けると共に、多数の土砂災害が発生しました。中でも規模が大きかったのが中条川上流での土砂災害でした。 現地では災害関連砂防事業による砂防堰堤の新設に加え,「栄村中条川上流災害対策検討委員会(平成23年4月19日~平成24年3月31日;信州大学名誉教授 北澤秋司委員長)」の提言に基づく対策が進められ,山腹工・谷止工・減勢工等が整備されており,発災から13年が経過した現在も工事が継続しています。また,本現場は災害後,苗場山麓ジオパークの見どころスポットにも位置付けられ,現地に紹介看板が設置されており,大地の成り立ちと自然との共生について学ぶ場としても活用されているとのことでした。

      午前中に引き続き,北信地域振興局林務課神原課長補佐様からご説明をいただきました。

      ジオパーク説明看板も現地に設置されています。山腹工,谷止工等,土砂の流出を防止する対策工が見渡せます。

  4. まとめ
    中条川見学中に雨が強まり,会場を長野県北信建設事務所飯山事務所会議室に移して検討会の続きを行いました。この中で,今回参加した学生会員の皆さんからご意見をいただきましたのでご紹介します。
    ・地質の違いによって対策も違ってくることを感じた。(現地を十分把握できなければ)正しい対策が検討できているかわからないという不確実さがあることを認識できました。
    ・日頃論文でしか見たことのないような現場を見ることができてよかった。地震と土砂流出について改めて考える機会となりました。
    ・現地に赴くことでしかわからないことがあることを実感しました。このような会を今後も是非開催していただきたい。

    最終的には心配されたとおり雨となりましたが,徒歩移動のあった午前中は天気が崩れず,参加者の皆様のご協力もあって,現場をしっかりと安全かつ熱心に見学いただけたことは幸いでありました。主催者として胸をなでおろしたところです。
    今回の見学会を通じて地震と土砂災害について改めて学ぶことができたと考えていますが,能登半島地震災害の現場では豪雨による被害拡大の事態に直面され,より一層の対策が必要とされています。信越支部では現地の一日も早い復旧復興を祈念するとともに,緊急調査等の対応を通じて少しでも能登地方の復興に役立つよう尽力する所存です。
    おわりに,土砂災害に関する様々な情報をご提供いただくとともに,現地での安全確保や会場のご配慮など多大なご支援をいただいた長野県北信地域振興局林務課,北信建設事務所整備課,北信建設事務所飯山事務所の皆様に改めて感謝を申し上げます。(文責:(公社)砂防学会信越支部 事務局 藤本 済)