「砂防の観測の現場を訪ねて」の発刊について
気候の変動が世界的に顕著になってきており,1990年代以降,日本でも深刻な土砂災害が頻発するようになりました。このような土砂災害を防ぐためには,これから発生するであろう土砂災害を適切に予測・想定して来るべき未来に備える必要があり,そのためには,土砂の移動現象やこれに伴う災害の発生機構に対する理解と洞察が不可欠です。そして,正しく理解し,より深く洞察するためには,現場で直接データを取る現地観測を継続的に実施することが重要です。
このたび,地道ではあるものの土砂災害研究や対策実施において必要不可欠であるこれら現地調査や観測の重要性や面白さを広く伝えることを目的とし,砂防学会誌「観測の現場を訪ねて」に掲載された記事を改めて再編のうえ「砂防の観測の現場を訪ねて」として発刊いたしました。
ぜひ一度本書を手に取っていただき,日々の研究や業務の参考にして頂くとともに,「砂防」や「土砂災害」に関心ある方へ広くご紹介を頂けましたら幸いです。
砂防の観測の現場を訪ねて1
~土砂災害を知るための観測~
土砂移動現象には未解明の部分が多く、解決すべき課題が数多くあるため、なかなか土砂災害がなくなりません。この先、土砂災害を減らし、やがてはなくすためには、こつこつと地道な現地調査や観測により、これら課題を解決する必要があります。
ぜひ、本書を手にとって「砂防」の観測の現場を訪ねに行きましょう。
出版プロジェクト委員会
(発行日:2020年3月27日)
第1編 土砂災害がどのようにして発生したかを知るために観測する
第1章 1993 年鹿児島県土石流災害
<シラス台地周辺の大規模な土砂災害はどのようにしておこるのか>
第2章 1999 年広島県土石流災害
<同時多発する表層崩壊はどのようにしておこるのか>
第3章 1999 年以降の三重県藤原岳の土石流
<1つの場所で何度も発生する土石流はどのようにしておこるのか>
第4章 2005 年宮崎県の土砂災害
<深層崩壊による土砂災害はどのようにしておこるのか>
第5章 2013 年伊豆大島土石流災害
<火山地域の表層崩壊による土砂災害はどのようにしておこるのか>
第2編 被害の拡大を防ぐために観測する
第6章 1990 年雲仙・普賢岳の噴火
<土石流や溶岩ドーム崩落による被害を防ぐために>
第7章 2000 年三宅島の噴火
<早期緑化・復興のために>
第8章 2008 年岩手・宮城内陸地震
<融雪に起因した土砂災害の減災を目指して>
第3編 土砂災害の発生を予測するために観測する
第9章 土石流の発生・流下を予測する
<不安定土砂の蓄積状況から土石流を考える>
第10 章 表層崩壊の発生を予測する
<地中の脆弱層を把握する>
第11章 斜面崩壊の発生を予測する
<世界文化遺産を守る>
第12章 深層崩壊の発生を予測する
<地下水の集中箇所を把握する>
コラム
① 観測を通じて現場から地域へ
② 調査・観測体制の重要性
③ 溶岩ドーム挙動観測の監視基準とソフト対策について
④ 高濃度火山ガスが発生する離島での観測
⑤ 積雪深4m に及ぶ中で積雪層を観察
⑥ 大規模崩壊地内での現地観測
⑦ 観測のやりがい
⑧ 野外観測の必要性を痛感
⑨ 山地における渓流水調査の工夫と苦労
砂防の観測の現場を訪ねて2
~山地河川内の複雑な土砂の動きを知る~
はかることが難しく、動きが複雑で、色々なことの影響を受ける、山地河川の土砂の動きを理解することは容易ではありません。そのため、土砂の動きについてはまだまだ知られていないことがたくさんありそうです。見方を変えれば、この世界には、まだ見ぬ世界が広がっていると思います。
是非、皆さん、土砂の動きを観測してみませんか?
出版プロジェクト委員会
(発行日:2021年4月)
第1章 ハイドロフォンを用いた掃流砂観測
<岐阜県高山市足洗谷流域における観測>
第2章 スイス型ジオフォンを用いた掃流砂観測
<スイス Erlenbach 試験流域における観測>
第3章 濁度計やUAVを用いた土砂の動態観測
<和歌山県荒木川流域における観測>
第2編 山地河川の複雑な土砂の動きの実態把握
第4章 山地河川の水深方向の土砂濃度の違いの把握
<福島県阿武隈川上流域における豪雨時の流砂観測>
第5章 山地河川の横断方向の土砂の動きの違いの把握
<長野県姫川流域における流砂の連続観測>
第6章 山地流域における間欠的な土砂の動きの把握
<山形県釜淵森林理水試験地における流出土砂の長期観測>
第7章 山地河川の階段状の河床形とその形成過程の把握
<新潟県佐渡市大河内川における Step-Pool 構造の長期観測>
第3編 山地流域で生じる様々なインパクトが土砂の動きに及ぼす影響
第8章 上流で発生した土石流が流砂量に及ぼす影響
<長野県天竜川水系与田切川流域における土砂動態観測>
第9章 大規模土砂生産が山地河川の河床変動に及ぼす影響
<北海道日高地方ルベシュべナイ川における長期間の河床変動観測>
第10章 山火事が山地流域からの土砂流出特性に及ぼす影響
<韓国南部6流域における掃流砂観測>
第11章 シカの食害が山地流域からの流出土砂量に及ぼす影響
<神奈川県丹沢山大洞沢観測所における水と土砂動態観測>
コラム
① チューリッヒのお酒事情
② 調査・観測は総合学習の時間
③ 観測の重要性(海外での土砂災害調査で苦労したこと)
④ 現地調査のやりがいと必要性
⑤ 長期間調査継続のやりがいと難しさ
⑥ 韓国の観測事情
砂防の観測の現場を訪ねて3
~水の動きの不思議~
日本が世界的にリードしている山地の水の動きに関する最近の挑戦を紹介します。そこからは、水の動きの色々な「不思議」が見つかると思います。まだ、もしかすると、私たちは不思議の一部を理解し始めたに過ぎないのかもしれません。是非、本書が、新たな挑戦を始めるきっかけになればと思っています。
出版プロジェクト委員会
(発行日:2022年4月)
第1章 大起伏山地における洪水流出の観測
<静岡県大井川水系東河内川における水文観測>
第2章 山地河川での洪水伝播の実態解明
<静岡県南伊豆樹芸研究所青野研究林における大雨時の観測>
第3章 フラッシュフラッド現象の解明を目指す
<岐阜県神通川水系金木戸川における水文観測>
第2編 土石流を観測する
第4章 世界に先駆けた土石流の総合的観測
<長野県焼岳東斜面上々堀沢における土石流観測>
第5章 50年にわたる土石流観測の歴史
<静岡県富士山大沢川における土石流観測>
第6章 2次元レーザスキャナを用いた土石流の流速と表面形状の計測
<鹿児島県桜島有村川流域における土石流観測>
第3編 山地の地下水の動きを観測する
第7章 山地小流域の地下水変動と水流出の観測
<岡山県竜ノ口山森林理水試験地における水文観測>
第8章 基岩層を介した降雨流出プロセスの解明
<兵庫県六甲山系西おたふく山試験流域における斜面水文観測>
第9章 深層崩壊メカニズムの解明をめざす
<滋賀県比良山地葛川サイトにおける地下水観測>
第4編 積雪・雪崩を観測する
第10章 積雪期における地すべり土塊内の地下水の流れの解明
<長野県小谷村池原地すべりにおける地下水流動層調査>
第11章 雪崩の発生検知と大規模雪崩の実態
<新潟県妙高山域幕ノ沢における雪崩の調査・観測>
第12章 雪崩の発生・流下現象の解明をめざす
<新潟県糸魚川市柵口地区の雪崩観測>
コラム
① 観測が思い通りに行かない時に新しい展開があることも!?
② 怖い現地調査
③ 土石流観測~段取りとリスクの克服
④ 山の歴史と野生との攻防
⑤ ハイドログラフに込められた思い
⑥ 雪山での調査・観測の苦労と工夫
⑦ 創立100年を越えて~森林総合研究所十日町試験地~
砂防の観測の現場を訪ねて4
~自然との共生のために~
研究者・技術者は自然との共生を目指し,水や土砂移動現象そのものや人間活動の影響をより深く理解するために,長期的な観測に加えて,様々な技術やアイデアにより,課題を克服しようと努力してきました。 本巻は,調査・観測に関するひたむきな努力とアイデアの宝庫です。
是非、皆さん、ご一読下さい。
出版プロジェクト委員会
(発行日:2023年4月)
第1章 伊豆大島崩壊斜面の土壌侵食と植生回復
<東京都 大島町 大金沢斜面におけるモニタリング調査>
第2章 大規模地震で崩れた土砂・流木の移動
<北海道 厚真川水系 ハビウ川上流域における水文・土砂動態観測とUAV計測>
第3章 大起伏山地における大規模崩壊地の拡大
<山梨県 赤石山脈 アレ沢崩壊地における斜面動態観測>
第4章 地すべりの発生履歴を樹木が語る
<青森県 白神山脈 岩木川上流等における樹木調査>
第2編 人間活動と水・土砂・栄養塩流出の相互作用の解明に向けて
第5章 はげ山からの植生回復と土砂動態の変遷
<兵庫県 六甲山系における水文・流砂観測>
第6章 登山道が引き起こす水・土砂流出
<長野県 霧ヶ峰・車山湿原における登山道の水・土砂流出観測>
第7章 豪雪地帯の森林からの水・栄養塩の流出
<鳥取県 中国山地「蒜山の森」における水文水質観測>
第8章 人間の攪乱が100年後の土砂流出に及ぼす影響
<ニュージーランド ウェラマイア川流域における土砂動態調査>
第9章 原子力発電所事故後にともなう放射性セシウムの山地斜面からの流出
<福島県 伊達市霊山町 上小国川における放射性セシウム動態調査>
第3編 自然との共生を目指して
第10章 自然と共存した砂防事業を目指して
<富山県 常願寺川流域における自然環境調査>
第11章 都市山麓グリーンベルトの整備を目指して
<兵庫県 六甲山地における植生調査>
第12章 噴火荒廃山地の植生回復を目指して
<長崎県 雲仙普賢岳における長期間の植生調査・水文土砂流出観測>
第13章 魚と共生した川づくりを目指して
<新潟県 信濃川水系 登川における魚類動態調査>
コラム
① 実は違っていた定点カメラの目的
② 自然公園内での流量観測
③ 雨ニモメゲズ,雪ニモメゲズ
④ フィールド調査から学ぶ
⑤ 観測にひと手間加える-モデルを使ってみよう-
⑥ 調査において苦労している点
⑦ 見本林
⑧火山斜面の巨石に生えた一本松
購入申し込み
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メール送信後に下記口座宛に代金をお振込みください。順次本書を送付いたします。
なお書籍代は1巻~4巻の全て、1冊2,200円(税込)です。これに送料(1冊310円、2冊360円、3冊360円、4冊370円)を加えた額をお振込みください。4冊以上をお買い求めの際には送料が変わりますのでご相談ください。
(口座名義:公益社団法人砂防学会)
*「砂防の観測の現場を訪ねて1」のちらしはこちら
*「砂防の観測の現場を訪ねて2」のちらしはこちら
*「砂防の観測の現場を訪ねて3」のちらしはこちら
*「砂防の観測の現場を訪ねて4」のちらしはこちら