いのちを守るために総合科学としての「砂防学」を推進しよう

砂防学会長
広島大学 教授
海堀正博
研究分野
森林圏科学/山地保全(砂防学)
地球惑星科学/自然災害科学・自然環境科学(砂防学)
社会・安全・防災工学/防災工学(砂防学)

みなさん、こんにちは! 公益社団法人砂防学会第四期会長の海堀正博です。7月の西日本一帯での豪雨災害を始め、異常気象、極端気象による大災害が続いています。9月には北海道胆振東部地震による大災害も発生しました。さまざまな自然災害がつぎつぎと発生し、多くの命が奪われる状況を見るとき、防災に携わる人間の一人としてこのまま命が奪われる状況を放っておくわけにはいかないとの念に駆られます。

7月の豪雨災害では、西日本の1府13県で230人以上の死者・行方不明者が出て、平成に入ってからの豪雨災害としては犠牲者数が最多となっています。中でも、広島県では死者109人、行方不明者5人、死者のうち88人が土砂災害によるとされており、その割合は8割以上にのぼります。広島では4年前の2014年8月にも77人の命が奪われる「8.20広島土砂災害」が起きており、現在もその復旧・復興に向けてハード対策・ソフト対策等が進捗中でした。4年前の災害時には避難勧告等の発令が土砂災害の発生後になってしまったことで多くの犠牲者が出てしまった、との解釈が主流でした。それに対し、今回の災害では、気象台からの注意報・警報等も、気象台と砂防部局の連携による土砂災害警戒情報も、集中的な土砂災害の発生時刻よりは早い段階で出されており、それを受けての市町などからの避難勧告等も早めの発令だったと言われていますが、結果的にはより多くの人命を失う大災害となってしまいました。今回の災害では、どうして住民の避難行動につながらなかったのかが問われています。

しかし、本当にそういう見方で良いのでしょうか? むしろ避難行動につなげられた人々が、これまでに比べてずいぶん多くいたのではないかという気がしています。現地調査の折に住民に尋ねてみると、土砂災害の発生時刻よりも前の段階で、異常な臭いや道の上を流れる泥水や沢から住宅地に流れ出してくる泥水などを見て隣近所の人と一緒に避難した、という人が何人かおられました。避難所に行ったがそこがいっぱいで入ることができず、やむなく自宅に戻ったという人もいました。指定された避難所に行った人の数だけではわからない実際の避難行動について、もっと詳細に検証する必要がありそうです。

一方、9月6日に発生した北海道胆振東部地震では、厚真町で最大震度7、安平町で震度6強を観測するなど強い地震動が生じ、その影響を受けた地域では土砂崩れも多数集中して発生し、41人の命が奪われました。一昨年の熊本地震の時にもそうでしたが、火山地域の特殊な土壌や地質構造が土砂移動のメカニズムに関わっていた可能性も高く、今後の防災のためにも詳細な調査・研究が望まれます。

公益社団法人砂防学会では、平成30年7月豪雨による土砂災害に対しても、また、平成30年北海道胆振東部地震による土砂災害に対しても、砂防学会としての緊急調査団を早期に立ち上げ、土砂移動現象の発生メカニズムや災害の原因や課題を明らかにし、今後の防災や減災を考えながらの復旧・復興に寄与するための活動を続けています。

私には、災害の度にとられる新たなハード対策やソフト対策が、少しずつかもしれませんが確実に地域住民の防災意識の向上と実際の防災・減災に貢献していると感じられます。まだまだ不十分な段階で満足できる状態にはほど遠いことも事実だと思いますが、砂防学会の会員はじめ、砂防関係の方々のご尽力のおかげで、この後も起きてしまった災害の教訓を将来に生かすべく、研究や教育や地域振興やいざというときに備えた広報が継続されることと思います。

砂防学会会員のみなさまには、これからもいのちを守るための貢献を続けていってくださいますよう心から希望しています。砂防学会の会員ではない方々からもぜひご支援いただけますことをお願い申し上げます。