北海道大学特任教授
山田 孝
このたび第7期の学会長に就任いたしました山田孝です。第6期に引き続き、砂防学会へのご支援、ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
今や気候・地殻変動、人口減少(急減)・少子高齢化の時代であり、そうしたトレンドは今後、より一層、顕在化していくものと思われます。気象の極端化による豪雨の規模・頻度の増大や地殻変動による地震の増加によって、土砂移動現象の規模や発生頻度が増え、様々な土砂移動現象が複合・連鎖化するようになることが想定されます。一方で、土砂災害を受ける主体である地域では、深刻な社会問題である人口減少(急減)・少子高齢化により、地域コミュニィティが弱体化し、自助、共助、公助、第三の公共による連携の力が弱まっていく場合もあることが危惧されます。
こうした厳しい時代において、公益法人としての砂防学会の役割は、より一層、大きなものになると思います。1951年の学会発足、1988年の社団法人化、2013年の公益社団法人化を経て、砂防学会は、砂防学の進歩、砂防事業の発展、並びに砂防技術者の資質の向上を図り、もって国土の保全、国民生活の安全、学術文化の進展と社会の発展等に寄与することを目的として発展してきました。砂防学会誌や英文誌International Journal of Erosion Control Engineeringの発行による質の高い学術研究や技術開発成果の紹介や普及、研究発表会等による国内外での学術・技術開発交流の推進は、これからも学会活動の根幹となる活動です。ワークショップや公募研究会、若手研究の助成や刊行物の発刊(最近では、「砂防の観測の現場を訪ねて1巻~4巻」)も積極的になされています。土砂災害発生時の緊急調査と社会への提言は、まさに社会が必要とする土砂災害対策について、砂防学会が責任をもって世の中に発信させていただくものです。2016年に全国8つの支部が創設され、以降、それぞれの地域において土砂災害対策に資する学術、社会貢献活動が活発に展開されています。また、2015年に創設された砂防・急傾斜管理技術者資格制度は、いまや制度として定着し、砂防学会の主要な人材育成のプログラムを担うものとして実施されています。
こうしたこれまでの取り組みを着実に進めるとともに、気候・地殻変動、人口減少(急減)少子高齢化時代での新たな学術知や技術開発成果をもとに時代や社会のニーズに応じた改良を施し、さらには新たな取り組みを創っていくことがこれからの学会としての大きな役割であると思います。
砂防学会には、ハード対策、ソフト対策の両面から土砂災害を専門に研究、教育、広報し、産官学の強い連携によって支えられてきた歴史と実績の強みがあります。これからも、こうした強みを最大限に生かし、国内外の土砂災害の減災に貢献できる学会であり続ける必要があります。そのためにも、学生、若手、中堅、シニアの学会員が、質の高い学術知見や実利性の高い技術開発成果を共有し、楽しく自由闊達に交流・議論し、有意に活動できることが全ての基本となります。これからも会員皆様方のご支援ご協力をどうぞよろしくお願いします。