公益社団法人砂防学会関東支部 沼田市柿平沢土砂災害緊急調査実施概要
緊急調査団長 石川 芳治
・平成28年9月7日(水)未明、台風13号に伴う豪雨により、利根川水系片品川右支川柿平沢(群馬県沼田市利根町柿平地先)では土砂移動現象が発生し、下流にある柿平集落の住家4棟に被害が発生した。関東支部では「沼田市柿平沢土石流災害緊急調査団」を組織し、9月18日(日)に、国土交通省関東地方整備局利根川水系砂防事務所の協力を得て現地調査を行った。ここでは調査の概要を紹介する。なお、調査結果の詳細については、砂防学会誌に「災害報告」として投稿中であり、11月号に掲載される予定の「災害報告」を参照されたい。
・緊急調査団氏名 (順不同)
団長(支部長) 石川 芳治 東京農工大学
団員(副支部長) 執印 康裕 宇都宮大学
団員(幹事) 柏原 佳明 アジア航測(株)
団員(幹事) 宮田 直樹 国際航業(株)
団員(幹事) 大野 亮一 国土防災技術(株)
団員(幹事) 飛岡 啓之 パシフィックコンサルタンツ(株)
団員(幹事) 梶原 誠 (株)ハヤテ・コンサルタント
団員(幹事) 沼宮内 信 川崎地質(株)
・調査日時 平成28年9月18日(日)
(現地調査 10:30~16:30)
・柿平沢の概況: 流域面積 0.35k㎡
主流路長 1.2km
標高 610m(集落)~1173m
地質 上流;戸倉オフィオライト ダンかんらん岩
斑れい岩、輝緑岩および玄武岩
下流;岩室層 礫岩、砂岩・頁岩互層
・降雨状況:
柿平集落から約3km西にある薗原ダムにおける降雨量は、9月7日の日雨量115mm、最大時間雨量73mm(7日4時~5時)であった。薗原ダムの観測期間である1966年~現在までの約50年間における最大日雨量は197mm(1998年)で9月7日の日雨量は第16位であり、最大時間雨量は第1位(第2位は1966年の51mm)である。また、土壌雨量指数に関しては今回の降雨の確率年は1.34年である。このことから、過去50年間において最大である短時間降雨量が今回の土砂移動の発生に強い影響を与えたと考えられる。
・土砂移動現象の概要:
柿平沢本川の上流域において発生した土砂(写真-1)は柿平沢を流下し、流下 の途中で渓岸・渓床を侵食しながら(写真-2)土砂量を増し、下流の柿平集落周辺で土砂が流路から
集落内に氾濫・堆積(写真-5,6)し、一部は下流の根利川に流下した。土砂と共に流木も流下し一部 が集落内で氾濫・堆積した。また、土砂と流木の一部は途中の治山谷止工(4基)により捕捉され堆積
した(写真-4)。本川の中流部では流木と土砂が絡み合って堆積してできた流木ダムが形成された(写真-3)。柿平沢の左支川の上流でも土砂移動が発生し(写真-7)、侵食により土砂量を増して(写真-8)流下し、一部の土砂は柿平沢本川に流入したが、大部分は左支川の下流部において氾濫・堆積し、集落に与えた影響は小さかった。
写真1:柿平沢本川上流の土砂移動開始点の状況
写真2:本川の源頭部下流区間の侵食状況
写真3:流木が渓床に堆積した(流木ダム)状況
写真4:下流から2番目の治山谷止工
写真5:下流部における開水路と暗渠部の状況
写真6:氾濫・堆積した土砂等の状況
写真7:柿平沢左支川の土砂移動開始点付近の状況
写真8:左支川における侵食状況