(公社)砂防学会中四国支部設立の目的
地域に密着した活動を通して、砂防に関する技術の交流、技術の向上、情報交換等を図るとともに、中国地域(山口、島根、鳥取、岡山、広島)と四国地域(愛媛、香川、徳島、高知)における災害発生時の緊急調査体制を迅速に整え、行政機関等との災害協定を締結し、災害の実態・原因の迅速な解明、二次災害の防止や災害復旧への貢献、関係機関への情報提供、一般の市民の土砂災害に対する知識や認識の向上等を図る。
(公社)砂防学会中四国支部設立趣意書
(公社)砂防学会は、砂防学の進歩、砂防事業の発展ならびに砂防技術者の資質の向上を図り、これにより国土の保全、国民生活の安全、学術文化の進展と社会の発展等に寄与することを目的とした学会です。このため毎年、研究発表会、シンポジウム、現地検討会、講習会等、種々の活動を行っています。また、重大な土砂災害が発生した場合には直ちに緊急調査団を派遣して災害の実態を迅速に把握し、その結果を記者会見や一般市民向けの報告会を開催し広く国民に伝え、必要な場合には提言を行っています。
(公社)砂防学会ではそれぞれの地域において幅広い技術者・行政担当者・研究者・地域住民の皆様の参加と協力を得られるように、全国で支部の設置を進めています。砂防が主な対象としている土砂災害の発生形態や被害は各地域により特徴があり、土砂災害防止に携わっている技術者・行政担当者・研究者も、それぞれの地域で活動されている方が多数を占めています。支部の設置は、このような背景のもと、砂防学会の活動をより地域に密着したものとし、地域にあった土砂災害対策、地域の人々のために役立つ活動を展開して行くためです。
近年、中四国地域においても土砂災害が頻発しています。花崗岩類が広範囲に分布している中国地域においては、表層崩壊や土石流が多発する特徴があり、中央構造線を始め多くの断層の影響を受けている四国地域においては、豪雨地帯の多いこととも相まって比較的規模の大きな深層崩壊や地すべりなどが起きやすい特徴があります。たとえば、平成11年6.29広島土砂災害は、多数の表層崩壊や土石流によって人家の密集した地域で大きな被害が発生していたことから、ソフト対策に重点をおいた新たな法律、土砂災害防止法の制定につながる大災害でした。平成16年にはいくつもの台風が中四国地域にも猛威をふるいました。特に、四国では何度も台風の暴風雨に見舞われ、規模の大きな深層崩壊を含む土砂移動現象が繰り返し発生したことで大きな被害を受けています。平成17年、平成18年、平成21年、平成22年、平成23年、また、平成25年と、中四国の各地で記録的な豪雨による土砂災害を経験してきました。さらに、平成26年には、高知で8月1日から8月10日までの10日間で総雨量約2,000mmもの大雨がもたらされ、土砂災害が多発しています。また、同年8月20日には広島でも高知より少ない300mm弱の総雨量でありながら、ふたたび広島市の人家が密集する地域で深夜に記録的な短時間集中豪雨があり、多くの人命が失われる土砂災害が発生したことなど、枚挙に暇がありません。このような状況を鑑みると、今後とも豪雨に起因した土砂災害の発生は非常に危惧される状況にあると考えられます。さらに、近年は南海トラフ巨大地震など、大きな揺れを伴う地震の可能性も高まってきており、これによる土砂災害の懸念もあります。
そこで、この度、中四国地域の土砂災害の対策・対応に関わる技術者・行政担当者・研究者が、地域に密着した種々の活動を通して、砂防に関する技術の交流、技術の向上、情報交換等を図るとともに、中国地域(山口、島根、鳥取、岡山、広島)と四国地域愛媛、香川、徳島、高知における災害発生時の緊急調査体制を迅速に整え、行政機関等との災害協定を締結し、災害の実態・原因の迅速な解明、二次災害の防止や災害復旧への貢献、関係機関への情報提供、一般の市民の土砂災害に対する知識や認識の向上等を図ることを目的に砂防学会中四国支部を設立することといたしました。中四国地域に在住の皆様、中四国地域で活動をされている皆様の積極的な支部活動への参加と協力を御願い申し上げる次第です。
2017.3.24(公社)砂防学会中四国支部