砂防学会 会長声明  2011年4月18日

東日本大震災に対する砂防学会の対応について

社団法人 砂防学会
会長 鈴木雅一


 2011年3月11日の東日本大震災によって亡くなられた方々のご冥福を衷心よりお祈りするとともに、かつてない甚大な被害を受けられた皆さまや関係の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
 近代日本の歴史の中で最大といわれる規模の地震と津波による、広い地域での災害ですが、海岸部とそれに隣接する地域で特に大きい被害が生じました。生存者の捜索、負傷者の治療、犠牲者の追悼、被災者の保護等被災地の住民への対応とそれに必要な避難所の確保や病院等の施設の復旧、仮設住宅の建設などが実施されています。
 同時に報道などでは必ずしも目立ちませんが、強い揺れで緩んだ地盤では、余震によるものも含め、斜面崩壊、地すべり等の土砂災害が発生し19名の方々が犠牲になりました(4月14日,国交省砂 防部調べ)。そして、土砂災害が多発する震度5強以上の地域は17都県233区市町村におよび、そこでの土砂災害危険箇所は約4万箇所と多くあります。これらの地域では、今後の梅雨期、台風期に備えて砂防関係施設の点検等の早急なる処置と、通常よりも弱く小さい降雨でも発生する可能性が高まる土砂災害への警戒が必要です。
 またこの大震災では、津波の規模、防潮堤、原子力発電所などに関して、戦後日本社会で多数の人が妥当と考えてきた幾つかの「想定」に変更を迫る事象が生起しています。そして、復旧ではなく復興が必要であるという認識も広範に生じています。これらのことは、主に中山間地を対象とした土砂災害の防止・軽減や、防風林、防砂林に起源をもつ海岸林の再生に向けた取り組みに対しても、これまでの「想定」の延長線上の研究の深化に加えて、更に学術的、技術的に根源的な考究の必要性をもたらします。それ故に、国土管理に関わる隣接分野の学会と同様、砂防学会の役割と責任も増していると受け止めています。
 砂防学会は、地震、豪雨、火山噴火に伴い発生する土石流、地すべり、がけ崩れ等による土砂災害から人命や財産を守り、安全・安心な国土の基盤を構築するための防災科学技術の振興と発展に寄与することを目的として掲げる研究者、技術者を主とする組織です。学会創設時からの「安全・安心な国土の基盤を構築する」という旗印は、自然の営力の大きさに対してとても重いものであることを再認識しつつ、東日本大震災から立ち上がり元気な日本を再生する一翼を担うため、我々学会員の総力を挙げて取り組みます。具体的には、東日本大震災で生じた土砂災害の実態の把握やその発生機構等の解明をはじめとして、急を要する課題、根源的課題の両者を検討対象とする委員会を設け、調査を行い、安全・安心な国土形成に役立つ成果の積極的な公表を行います。


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